e-messe kanazawa

83社・団体がVRやメタバースといった最新技術を活用した機器やサービスを紹介

金沢市の石川県産業展示館1号館で2024年5月16~18日、第39回いしかわ情報システムフェア「e-messe kanazawa 2024」が開かれ、83社・団体がVRやメタバースといった最新技術を活用した機器やサービスを紹介しました。今年は1月1日に発生した能登半島地震で復旧工事に当たった出展者によるレポートも多く見られ、人々の生活に欠かせない基幹インフラとしての情報通信の重要性を来場者に印象づけました。(国分紀芳)

目次

  • 来場者数は前年比4割増に
  • 衛星サービスで通信網を復旧/北陸通信ネットワーク
  • 企業ピックアップ
  • 【株式会社アイ・オー・データ機器】自動で環境に合わせるディスプレイ
  • 【株式会社ジェイ・エス・エス】スパムメールの「訓練」提案
  • 【株式会社タスク】AIが営業活動を可視化・効率化

来場者数は前年比4割増

主催する一般社団法人石川県情報システム工業会によると、出展者数は前年(85社・団体)とほぼ同水準のところ、3日間の来場者数は10,679人に上りました。2日間の開催だった前年と比べると4割ほど多い水準となります。

e-messe kanazawaは「ICTビジネスマーケット」と銘打っており、地元企業が提供する情報通信関連の最新トレンドが把握できる場です。今年の展示では、コロナ禍からの経済活動の再開と人手不足を背景として、デジタル技術で業務効率を改善するDXの推進手段、AIやChatGPTによって日々の生産性を高めるサービス、VRやメタバースを活用して仮想空間に構築された大学や美術館の内部を探検する仕組みなどが紹介されました。

その中で今年とりわけ目立ったのが災害対策にまつわる展示内容です。能登半島地震による甚大な被害を受け、地元企業では現在、BCP(事業継続計画)対応への関心が高まっています。一方の情報通信事業者は被災地で実際の復旧工事に携わった経験談を交え、より実践的な提案を行っていました。

衛星サービスで通信網を復旧/北陸通信ネットワーク

北陸通信ネットワーク

地理的条件からアクセスルートの限られた能登半島。発災直後は主要道路が損傷し、急きょ復旧作業に向かう自衛隊車両や物資を運搬する民間車両などにより、交通事情が一段と悪化しました。そんな中、情報通信産業に携わる事業者はそれぞれ、迅速な復旧作業に努めました。

日本経済新聞の報道によると、NTTドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯電話4社は1月18日、応急復旧の工事が立ち入り困難な一部地域を除いておおむね完了し、通信サービスが利用できるようになったと発表しました。

復旧工事で活躍したのは、車両から電波を飛ばす「車載型基地局」です。また、土砂災害で切断された通信ケーブルの復旧工事については、米スペースX社が提供する衛星通信サービス「スターリンク」も有効だったといいます。

この点、北陸通信ネットワーク株式会社は地震発生直後から奥能登に入り、およそ350台のアンテナを運び込みました。北陸通信ネットワークによると、各地にある携帯電話の基地局は光ファイバーで接続されており、地震によって光ファイバーが断線したり停電が発生したりしたことで、奥能登で携帯電話が使えない地域が出てしまいました。

スターリンクは衛星通信サービスのため、無線で通信環境を整えられます。アンテナは自動で衛星の位置を捕捉でき、一定レベル以下の降雪ならば熱で融かせます。北陸通信ネットワークは穴水町内にある倉庫に前線基地を設け、冬の能登半島で通信網の早期復旧に努めました。

また、能登半島地震では事務所が被災してサーバーに物理的な被害が及んだケースもありました。そこで、北陸通信ネットワークはクラウド上に業務データを保管するストレージサービスも提案。有事に業務を継続できるだけでなく、平時はサイバー攻撃対策を強化するという意義があることも訴求しました。

NTT西日本北陸支店のブースでは、被災地での復旧作業で実際に活躍した設備、損壊した家屋の状況をドローンで確認するサービスなどが展示されました。

それでは、いくつかの企業による展示を紹介します。

企業ピックアップ

【株式会社アイ・オー・データ機器】自動で環境に合わせるディスプレイ

アイ・オー・データ機器

PC関連機器を幅広く手掛ける株式会社アイ・オー・データ機器は今回、自社ブースを「液晶ラボ」と名付け、最新の液晶ディスプレイに絞って出展しました。

最新モデルの上位機種はディスプレイに「人感センサー」と「照度センサー」を備え、自動で節電する機能を持っています。人感センサーは作業者が席を立つと画面をオフにし、照度センサーはディスプレイの置かれた環境の変化に合わせて画面の明るさを調整します。両方の機能をオンにすることで、両方ともオフの場合と比べた年間の電気料金は、およそ半減させられるといいます。

また、一般的にマウスやキーボードはPC本体に接続するものですが、このディスプレイは搭載しているUSBポートを通じてマウスやキーボードといった周辺機器の「ハブ」となり、PC本体に給電もできます。つまり、PCは1本のケーブルでのみディスプレイにつながっているので、たとえば打ち合わせなどの離席時にはPCのみを簡単に持ち出せるようになります。

【株式会社ジェイ・エス・エス】スパムメールの「訓練」提案

ジェイエスエス

株式会社ジェイ・エス・エスは企業のセキュリティー対策となる「訓練」を紹介しました。まず、その企業の管理者層の承諾を得て、スパムメールに似た特徴を持つ訓練用メールを社員に一斉送信します。メール記載のURLを誤って開いてしまった社員には警告画面が表示され、そこで訓練だったことが明かされる仕組みです。

もちろん、それが実際のスパムメールならクリックすべきではありません。ただ、訓練ではクリックした社員の情報が生かされます。どんな部署のどんな社員が開いてしまったかを集計・分析し、口頭での指導から機器・セキュリティーソフトの更新までを含めた対策づくりに役立てられます。

ジェイ・エス・エスのブースではこのほか、量販店向けのMDソリューションも提案されました。レジで売り上げを記録するPOSシステムなどと連動し、商品の売れ行きを分析、在庫状況に応じた自動発注をも担うシステムです。一昔前だと熟練スタッフが経験則を基に担当していたような分野を、ある程度は誰でも代替できる仕組みに移し替えることで、量販店を悩ませる人手不足に対応できるといいます。

【株式会社タスク】AIが営業活動を可視化・効率化

タスク

株式会社タスクは顧客管理サービス「セールスフォース」を個別の会社の状況に応じてカスタマイズしたシステムを構築し、成長スピードを速めるソリューションを提案しました。

たとえば、営業メールを送信した際のリアクション率などをAIが分析し、現在どういった業界や地域の会社が自社のサービスに関心を持っているかといったデータを可視化します。こうして得られた情報を基に効率的な営業活動を展開できるようになります。

また、タスクによると、最近は特に中小企業において1社単独ではなく他社と協業するケースが増えていますが、自社に閉じたシステムを採用していると、スムーズな連携がしにくいデメリットがあります。そこで、タスクではセキュリティーを高めて安全な環境を確保しながら、社外の関係者と協業できるクラウドストレージサービスも紹介しました。

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著者プロフィール

国分紀芳(くにわけきよし)

Seeds合同会社代表社員。1985年、石川県生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社へ入社。経済記者として北陸新幹線開業、ホテルやマンションの開発ラッシュ、大型商業施設の相次ぐ進出などを取材する。2022年2月に独立後は各種ライティングやPRコンサルティングなどを手掛ける。https://connect-u.biz/

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