社会人としての心構え

「学生と社会人の違いはなんですか?」
社会人として第一歩は、その違いを認識することからはじまります。
違いは挙げ出すときりがないほどありますが、もっとも劇的に変わるのは次の5つといって良いでしょう。

1. 背負う「責任」

学生は授業料を支払って教育サービスを受け、知識や経験を学びますが、社会人は会社や組織で働くことで、その対価として報酬を得ます。報酬を得るということは、社会の利益に対し貢献する責任と義務が発生します。
仕事をおろそかにすれば、自分だけではなく、会社や取引先への損害を与えたり、関係者へ多大な迷惑をかけたりする可能性があります。

2.「時間」に対する感覚

就業開始、会議、打ち合わせ、取引先との面談、納期など、社会人になると常に時間が設定されます。さまざまな予定に即して時間を配分しながら、就業時間内にいかに効率よく仕事をするか。限られた時間をうまく使うことは、仕事の技能のひとつです。社会人になると時間に縛られることが多くなります。しかし、縛られると考えるのではなく、約束の時間を守り、時間を有効につかうことは、自分の自由な時間を増やすことにもつながると覚えておきましょう。

3. 縦中心の「人間関係」

社会人になると、さまざまな年代の人と、また苦手だと思う人とも仕事をしなければなりません。学生のときには横並びの人間関係だったものが、社会人になると縦中心の人間関係へと変化するので、上司・先輩・同僚や取引先の人など、年齢や役職がバラバラな人たちとどう接すればいいのかに悩み、ストレスの要因となることも多いようです。世の中には、自分とは全く違う考え方を持つ人が多くいることにも驚くでしょう。しかし、なぜこんな考え方をするのだろう、という好奇心で相手を見ていくと、攻略法が見えてくるかもしれません。

4.「教えてもらう」から「自分で覚える」へ

授業料を支払って「教えてもらう」学生から、報酬をもらって「自分で覚える」社会人へと変化を促すのは、プロ意識の差が大きく関わります。社会人全般でいうプロ意識とは、もっと成長したいという意欲的な気持ちや、自己実現、成果、結果に対する執着心や責任などが高いことを言います。簡単な仕事であっても、いかに相手が望むものに仕上げるかというプロ意識を持つことで仕事の内容も評価も大きく変わります。まわりをよく観察して、自分から覚えようとする姿勢がプロ意識の鍵です。
プロ意識を持つことで仕事の内容も評価も大きく変わります。まずはまわりをよく観察して、他の人のやり方を把握したり情報収集したり、わからないことを先輩に聞いたり、自分から覚えようとする姿勢がプロ意識の鍵です。

5. 評価の基準

学生のときに評価基準は「学力」ですが、会社での評価基準は「仕事の能力」です。会社によって評価の基準やポイントが違いますが、新入社員時は主に次のような評か項目が挙げられます。

  • 勤怠
    (出勤や退勤をはじめ、休憩や休暇などの社員の出勤状況を示すもの。遅刻・無断欠勤等もポイントとなる)
  • 仕事のスピード、納期の順守
  • 目標管理・スケジューリング
  • イノベーション
  • リカバリー能力(失敗した時の対処の仕方、失敗を次に生かせるか)
  • コミュニケーション能力

社会人としての最低限のマナーとルール

社会人のためのマナーやルールについて、ここでは新社会人が間違えやすいポイントに絞って紹介します。職場や取引先でのよりよい人間関係のために、また信頼を失わないためのリスク管理として、知っておくべき社会人としての最低限のマナーやルールを見ていきましょう。

1. 敬語の使い方

敬語は大きく3 種類に分けられます。目上の人などを敬う気持ちを表わすときに使う「尊敬語」と、自分を下げることで相手を立てる「謙譲語」、そして、「です、ます」などをつける相手に敬意をあらわす「丁寧語」。英語などの語学と同じように、何度も繰り返して練習したり、恐れずに使ってみることで上達します。

基本形 尊敬語 謙譲語 丁寧語
する
  • なさる
  • される
  • させていただく

  • いたします
言う
  • おっしゃる
  • 言われる
  • 申し上げる
  • 申し上げます
行く
  • いらっしゃる
  • おいでになる
  • うかが
  • 参ります

来る

  • いらっしゃる
  • おいでになる
  • 参る
  • 来ます

会社

  • 貴社
  • 御社
  • 弊社
 

2. 敬称と役職

敬称とは、「様」「さん」「くん」「殿」など、人名や官職名の下に付けて、その人への敬意を表す語です。また、相手または相手方の事物について敬意を表す、「貴社」「高著」なども敬称の類です。
役職とは、ビジネスにおける責任や職権を伴う役目や職務のことをいいます。例えば「部長職」であれば「組織内の部門を管理する」職務があり、「課長職」であれば「組織の中堅幹部として、一部門の課を管理・監督する」役目があります。
ここで、気を付けたいのは、社外で社内の人を呼ぶ場合は、たとえ上司であっても身内にあたるので敬称は付けないということ。社外で上司を紹介するときは、「山田課長です」ではなく「課長の山田です」と言うのが正しいです。

役員 社員
会長 部長、チーフマネージャー
社長、CEO 次長、マネージャー
副社長、COO 課長、チームリーダー
専務 係長
常務 主任
取締役 平社員

3. 便利な応接用語

取引先の担当者やお客様の依頼や要望に応じられないときに、相手の気持ちをやわらげるフレーズを使うと、その趣旨を伝えやすくなります。
「恐れ入りますが」
「申し訳ございませんが」
「お願いできますでしょうか」
「せっかくお越しいただきましたのに、申し訳ございません」
「まことに申しあげにくいのですが」
ただし、ほんとうに申し訳ないという気持ちがなければ、かえって慇懃無礼にうつります。いくら美しい言葉遣いを覚えても、気持ちが伴わない言葉は逆効果です。

座る位置によって相手を敬っているという気持ちをあらわすことができます。これが、上席(上座)と末席(下座)の考え方です。会議室や応接室、レストランや喫茶店などでお客様に席を案内する際には、自然に上席をすすめ、自分は末席に座るようにしましょう。

5. 名刺交換での注意点

名刺を交換の際に注意する点は、以下の4つです。

  1. 訪問者の側から、または立場の下の者から先に出すのが原則
  2. 相手に名前が見えるように両手で渡す
  3. 受け取る際も両手で受け取り、名前が読めない場合は「恐れ入りますが、なんとお読みすればよろしいでしょうか」と臆せずに聞く
  4. 受け取った名刺は、一枚の場合は自分の名刺入れの上に置く。数枚ある場合は、座っている順に名刺を並べてき、顔と名前を記憶する

6. 電話の取次ぎ方

≪指名された人が不在の場合≫

⇒何時ごろ連絡が取れるかを相手に伝える
「申し訳ございません。ただいま田中は外出しており、午後5時に戻る予定です。よろしければ私がご用件をうけたまわります」

≪伝言を依頼されたとき≫

⇒お客様の会社名・氏名・電話番号・要件の概要・受付時刻をメモに書きとる

≪自分の名前を最後に名乗る≫

⇒「私、田中が承りました」

7. 携帯電話のマナー

  1. 時と場合によって電源を切る、もしくはマナーモードにして通話を控える
    • 訪問中・来客中・商談中
    • 電車・バスなど公共の乗り物内
    • 医用電気機器や電子機器などを取り扱う病院や航空機内
  2. 歩きながらの通話は避け、できるだけ静かで通行の妨げにならない場所で話す
  3. 携帯電話へかけるときは、要件を切り出す前に「今、お話してよろしいですか?」と相手の都合を確認する
  4. 周囲の人に聞かれては困る重要な話は、駅や出先などの人が多い場所で携帯電話を使って話すことを控える
  5. 運転中の携帯電話を手にもっての使用は厳罰の対象

≪交通の危険を生じさせた場合≫

刑事処分:3ヵ月以下の懲役、または5万円以下の罰金
行政処分:普通自動車の場合の反則金9千円、2点減点

8. 社外文書の作成

社外文書は、個人ではなく、会社名で作成し発信する文書です。送り先の相手に失礼がないよう、一定の書式に従って作成する必要があります。

≪社外文書作成における4つのポイント≫

  1. 社外文書の形式を守って、読みやすい書式にする。形式を破ると読みにくくなる
  2. 独特な言い回しに慣れる(「ご高配を賜り」「なにとぞご査収ください」など)
  3. 尊敬語・謙譲語を正しく使い分ける
  4. 敬称を正しくつける
    (会社・団体には「御中」、個人に送る際は「様」。ただし会社名と個人名に重複して敬称は付けない
    ×「〇〇会社御中 〇〇様」
    ◎「〇〇会社 〇〇様」

9. ビジネス電子メールの基本の10ヵ条

①本文は短く簡潔に

本文は、必要事項を漏らさず簡潔に仕上げ、1スクロール程度で見られる長さにまとめましょう。やむを得ず長文になる場合は、「長文で失礼します」などの一文を冒頭にいれると良いでしょう。

②件名に内容の要約を入れる

受け取る側がすぐに内容を把握できるように、要点がわかりやすいタイトルをつけましょう。
「会議のご案内」→「〇日の会議は〇時に変更」
「〇〇の追加資料」→「〇〇資料_ 〇ページ追加原稿」

③末尾には署名をつける

メールの最後には、自分の名前、会社名、部署名、メールアドレスなどを明記するのが一般的です。メールソフトの署名機能を使うと便利です。

④こまめに改行を入れる

1 行の文字数は、長くても35 字くらいが目安です。改行を入れないと、受け取る側のメールソフトによっては、とても見ずらい画面になります。

⑤送信前にアドレスを再確認

メールソフトによっては、送信先のアドレスの一文字を入れただけで、送信する人のアドレスを選べるようになっており、競合する得意先に間違って送信してしまう可能性もあります。文書を再度読み替えして誤字脱字をチェックした上で、メールアドレスを再確認する習慣をつけましょう。

⑥特殊記号や外字は使わない

⑦返信は早めに

電子メールを送信した人は、受け取った人がそれを読んだかどうか確認できません。「了解」「受け取りました」など簡単な文でよいので、返信をしましょう。

⑧添付ファイルの添付確認

「ファイルを添付します」とメールに明記しておきながら、添付せずに送信することは、だれでも経験している凡ミスです。「添付されていないようですが、再度お送りいただけますか」などという返信メールを相手に送らせる手間をかけてしまうことがないよう、添付確認は忘れずに。

⑨添付ファイルの安全対策

重要なファイルを送るときには、パスワードをつけて、別メールや電話でパスワードを知らせるなどの安全対策も必要となる場合があり、自衛措置を義務付けている会社もあります。

⑩見知らぬメールは開かない

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