2026年5月21~22日、金沢市の石川県産業展示館4号館で、第41回いしかわ情報システムフェア「e-messe kanazawa 2026」が開かれ、過去最多の89社・団体が最新技術を活用して業務の効率化や省人化・省力化を実現するソリューションを提案しました。(国分紀芳)

 

 主催した石川県情報システム工業会によると、2日間で5,288人が来場しました。会場ではビジネスマンのほか、就職活動を控えて各社のブースを熱心に見て回る学生の姿もありました。出展内容でとりわけ印象的だったのはAIが日々の業務における課題解決に関して大きな存在感を放っていたことです。

 ともすれば、テクニカルな先端技術として、半ば現実の業務とは離れたものとして捉えられていた側面も否定できなかったAI。ところが、今回のe-messeを見ていると、その能力を職場での具体的な活用の場面に落とし込んだサービスがいくつもあり、さまざまな現場への実装が進み始めた様子がうかがえました。

目次

・生成AIがEC業務の負担を軽減【株式会社システムサポート】

・AIが「後追い」で映像を分析【北菱電興株式会社】

議事録はAIが瞬時に作成【株式会社横山商会】

・【株式会社アイ・オー・データ機器】

・【金沢IT部活】

 

生成AIがEC業務の負担を軽減【株式会社システムサポート】

 今や私たちの生活に欠かせない存在となったEC。この市場の拡大を巡る問題というと、荷物量の増加とドライバーの不足といった物流にスポットが当たりがちですが、その裏側で、商品の売り手側の人手不足やEC対応の負担増加も深刻になっています。

 そこで、株式会社システムサポートは生成AIがECの運用業務を大きく効率化できる「GEN-STEP」を提案していました。

 たとえば、ECでアパレルを販売するケースでは、これまでなら撮影スタジオやモデル、カメラマンを確保し、商品の魅力や詳細を説明する文章を考え、入力する必要がありました。しかも、屋外で撮影する場合は当日の悪天候によって複数のスタッフのスケジュールが狂ったり、せっかく文章を練りに練っても既存商品とさほど変わらなかったりして、かけた労力に対してアウトプットが見合わないケースもあったといいます。
 この点、GEN-STEPは商品画像さえあれば、それをAIが生成したモデルに着せた上で「パリのカフェにあるテラス席のような、華やかながらリラックスした背景にして」などと注文することで、商品を着用したモデルがオープンな雰囲気のもとで談笑しているような画像を瞬時に作成できます。また、商品説明文も自動で作成でき、画像にしろ説明文にしろ、いったん出来上がったものを修正することによって自分たちのイメージに近付けられます。

 さらに、AIは自社のブランドについて学習し、ターゲットとしているブランド、よく使う色調、言い回しなどを学ぶため、単にスピーディーに作業を代替してくれるだけでなく、どの社員でも簡単に自社の目指すイメージに沿ったEC運用ができるそうです。

 

AIが「後追い」で映像を分析【北菱電興株式会社】

北菱電興株式会社のブースには「AI×北菱電興」という大きな幕が掲げられていました。

 紹介していたのは①法人向け生成AI、②AI図面文書活用システム、③AIカメラ、の3種類です。このうち③は一見したところ監視カメラと監視モニターがあるだけですが、実際は映像の内容をAIが確認・分析する機能を持っています。
 製造業の現場に設置したとすると、どこでどういうアクシデントが起こったか、逆に歩留まり率の高い作業員の動きにはどのような特徴があるのか、といったことを把握できます。このシステムが優れているのは、撮影する前にあらかじめ調べたい内容を登録しておかなくても、撮影後に入力した調べたい内容に沿って「後追い」で時間をさかのぼって分析できる点です。

 また、大型の商業施設で用いれば、性別や年齢層、メガネの有無といった特徴に基づき、時間帯やエリアごとの流動を調べることも可能です。こうしたデータはリニューアル時のフロア構成やテナント誘致のヒントになります。他には防犯対策やイベント会場での活用が見込まれるそうです。

 

議事録をAIが瞬時に作成【株式会社横山商会】

 各業界で人手不足感が強まる中、限られた人的リソースは人間にしかできない業務に集中させ、自動化できる業務は自動化させたいという意識が高まっています。株式会社横山商会は後者に当たる業務の一つに「議事録の作成」があるとみて、AIによって作業の大部分が自動化できるソリューションを提案しました。

 ステップは大きく3つに分かれ、まず「録音」、そして「文字起こし」を終えて「議事録作成」に至ります。

 第1の特徴は精緻さにあり、単に音声を文字化するだけでなく、発言者を「Aさん」「Bさん」と特定した形で文字起こしします。特定に当たっては、声質だけでなく声が発せられた方向を参考にするので、たとえばファミリー企業で骨格が似ていて声質も似た親子がいたとしても、両者の声を聞き分けられるそうです。第2に、バラエティーの豊かさやカスタマイズ性があります。議事録はもともと数十種類のテンプレートがあり、業界によってはあらかじめ専門用語を網羅しています。また、いったん完成した議事録について「もう少しコンパクトに収めてほしい」「冒頭の雑談も実はビジネスにつながっているから議事録に反映させてほしい」と追加で注文して修正できます。

 もちろん、議事録の作成が会社としての重要な業務であるのは今も昔も変わりません。しかし、時間を掛ければ掛けるほど高品質なものが出来あがるとは限らない業務でもあります。こうした作業を自動化・半自動化することで、それぞれの職場における生産性の向上につなげたいといいます。

 

【株式会社アイ・オー・データ機器】

 2026年1月10日に創業50周年を迎えた株式会社アイ・オー・データ機器は、記念モデルとなるゲーミングモニター「GigaCrysta S」を出展しました。

 ゲーム用シリーズ「GigaCrysta」の最上級モデルで、4KとフルHDを切り替えられる27型モニターです。フレームレートを変更できるのはプレーするゲームの特性に適した環境をつくりだすためで、映像美を楽しみたいゲームならば4K、動きの速いシューティングゲームようなものを楽しみたいならばフルHDと解像度を選ぶ使い方を想定しています。

 

 画面にはミニLEDのバックライトを採用しており、従来品と比べると、黒色と他の色との境界がはっきりとする特徴も備えています。担当者は「もうすぐ12周年を迎えるGigaCrystaで培った技術を詰め込んだ」と胸を張りました。複数のモニターを使い分けていたゲーム愛好者も、これなら1台で完結させられ、デスク回りがスッキリとする効果も望めそうです。

 

【金沢IT部活】

 e-messe kanazawa 2026には、企業単体のブースだけでなく、石川県内の大学や自治体などのブースも並んでいました。そのうち、官民が連携してIT人材の育成にチャレンジしている「金沢IT部活」は、自律型ロボットによる国際的なロボットコンテスト「WRO」で、2025年の世界大会に出場した際の映像を流しながら、日ごろの取り組みを紹介しました。

 金沢IT部活は中学生・高校生向けで、部活動のような形でIT人材を育成すべく活動しています。今では小学4~6年生向けの「金沢ロボ活」、大学生や社会人向けの「金沢IT部活ベンチャーズ」に派生しています。主催は金沢市、石川県情報システム工業会で、株式会社PFUと株式会社システムサポートが協賛し、社員が先生役を担っています。 

 


 こうした学校横断の取り組みを続けた結果、2025年は金沢ロボ活のチームがWROの国内大会を勝ち抜き、11月にシンガポールで開かれた世界大会に出場しました。ちなみに2025年は石川県勢が躍進しており、金沢ロボ活のほか、石川高専とミミミラボの計3チームが日本代表として海を渡っています。

著者プロフィール

国分紀芳(くにわけきよし)

Seeds合同会社代表社員。1985年、石川県生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社へ入社。経済記者として北陸新幹線開業、ホテルやマンションの開発ラッシュ、大型商業施設の相次ぐ進出などを取材する。2022年2月に独立後は各種ライティングやPRコンサルティングなどを手掛ける。https://connect-u.biz/

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