石川県ゆかりのメーカーが最新機器やソリューションを展示する「MEX 金沢2026(第62回機械工業見本 市金沢)」は2026年5月14~16日、金沢市の石川県産業展示館1、3、4号館で開かれました。269社・団体が 参加しており、さらに人手不足感が強まる未来を見越して省人化・効率化を進めた工作機械、女性作業者の増加に対応するために改良した機器のほか、AI(人工知能)活用の現在地を示す展示がありました。(国分紀芳)

目次
3万人弱が来場/学生企画ではQUOカード贈呈
製造業の現場、女性比率じわじわ上昇
【澁谷工業株式会社】作業台を低く設定したレーザ加工機
【高松機械工業株式会社】アジアマーケット見据えたコンパクトな CNC 旋盤
【大同工業株式会社】車イス使用者が座って左右に移動できる機器
【金沢機工株式会社】ヒューマノイドのデモが注目集める
【株式会社ジェスクホリウチ】複数アイテムをピッキングするシステム紹介
【株式会社ソディック】モータを直線配置、レスポンス良い放電加工機
【中村留精密工業株式会社】96 種類の工具で多品種小ロットに対応
3万人弱が来場/学生企画ではQUOカード贈呈
主催した一般社団法人石川県鉄工機電協会によると、今年は269社・団体が出展しました。出展意欲は高く、キャンセル待ちの状態で当日を迎えました。
来場者数は3日間の合計で2万 9,486 人。平日だった初日、2日目は社会人や就職活動を控えた学生が多く、来場者数は計2万人を超えました。この両日は会場の至るところで商談や会社説明が活発に行われ、活気がありました。一方、土曜に当たる3日目は家族連れの姿も多く見られ、和気あいあいとした雰囲気でした。子どもたちに大
人気の立体シールをオリジナルで制作して配布したり、子どもが自分の持ち物を区別するために付ける目印チ
ャームを金属で作って配ったりする出展企業も見受けられました。

さて、会場では大学生、大学院生、高専生らを対象とした恒例の「学生特別企画」も実施されました。出展企業のうち33社が企画に賛同し、それらのうち3社以上を訪問してアンケートに答えた学生には、MEX金沢特製 QUO カード(1,000円分)が贈られました。
製造業の現場、女性比率じわじわ上昇
総務省「労働力調査」をひもとくと、製造業の現場では女性従業員の比率がじわじわ高まっていることが分か
ります。2002年に23%だった女性比率は、2015年に25%を超え、足元では30%程度まで上昇しています。
どうしてでしょうか。ある工作機械メーカーの営業担当者は「いまは機器の自動化が進み、習熟までに必要な
期間が短くなって、力仕事も減った」と解説してくれました。
「熟練の職人技」が物を言う現場はまだまだ多いでしょうが、最新の工作機械は数十種類の工具を備え、いわ
ゆる「段取り替え」のような切れ目なしに連続で作業を続けられます。そうした現場で必要なのは、手先の器用さ
というよりも、どうすれば効率的に、正確に作業を進められるかを考えて実行する能力であり、それならば腕力
が弱かったり小柄だったりする女性も活躍しやすくなっているということです。
もちろん、社会的には人口減少・人手不足や共働き家庭の増加により、労働力としての女性の存在感が増し
ているという背景があります。
そうした事情から、かつては「男社会」だったメーカー各社も、女性社員が働きやすい環境の整備を進めてい
るようです。まずはそんな2社の展示内容を見てみましょう。
【澁谷工業株式会社】作業台を低く設定したレーザ加工機
澁谷工業株式会社のブース正面には、2,500mm×1,250mm や 1,250mm×1,250mm の加工に対応し
たファイバレーザ加工機が展示されました。もともと主流だった炭酸ガスレーザ切断加工機と比べると、メンテナ
ンスの手間が小さく、電気さえあれば作業できるというメリットがあります。

澁谷工業のファイバレーザ加工機は、従来品との置き換えに際し、同じスペースでそのまま入れ替えられるよ
う、作業者の安全性に配慮したフルカバー仕様ながらコンパクトな設計です。厚さ 0.1mm のステンレスの微細
加工から、厚さ 12mm の軟鋼の加工まで1台で対応でき、使い勝手の良さも売りとなっています。
さらに特長として挙げられるのが、加工テーブルを低く設定したこと。小柄な女性の作業者が操作する場面も
想定し、加工テーブルの高さを従来品より低い 800mm としました。これは一般的なダイニングテーブルより少
し高いくらいです。実際に立ってみると、高身長の作業者も無理がなく、かつ背の低い作業者も動作しやすい高
さだと感じました。
【高松機械工業株式会社】アジアマーケット見据えたコンパクトな CNC 旋盤
省スペース・コンパクト設計の CNC シングル旋盤「AT-1」を展示したのは、高松機械工業株式会社です。
AT-1は汎用性と保全性(メンテナンス性)に優れた機種です。 主要部品は日本国内製で、担当者による
と、製造現場で女性が多く働いているアジアマーケットを意識しており、小柄な作業者も快適に作業できるよ
う、コンパクトな機体の側面には15インチの大型液晶タッチパネルを搭載しており、高い操作性を確保してい
ます。職人の経験則に過度に頼りすぎず、経験の浅い人も扱いやすい設計です。

その隣には、上下にあるタレット(刃物台)双方に Y 軸を設定した CNC 複合精密旋盤がありました。従来
品では上方にしか Y 軸がなかったのに対し、上下に Y 軸があることで、加工のバリエーションを増やせるとい
います。
【大同工業株式会社】車イス使用者が座って左右に移動できる機器
職場のダイバーシティ(多様性)推進という観点では、女性だけでなく、足が不自由な方やシニア人材が活躍
しやすい環境づくりも大切です。大同工業株式会社はロングセラー商品の階段昇降機の知見を生かし、車イス
使用者や足腰の弱ったシニア人材らが、座ったまま横方向に移動して作業するための機器を参考出展しました。

車イスは基本的に前後方向の移動がメインで、左右方向の動きにはなかなか対応できません。そのため、車イ
スを仕様する作業者は製造の現場で可能な作業の範囲が限られる事情があります。
今回、大同工業が出展した試作品の優れた点は、まるで鉄道おもちゃの「プラレール」のように、簡単にレール
を組み換えられる点にあります。工場のレイアウトや作業内容の変更に応じてレールの組み方を見直せます。
「その人ができる範囲の作業をしてもらう」ではなく「その作業に適した人材に担ってもらえるようにする」という
姿勢は、職場全体の生産性向上や作業者個人の満足度アップにつながりそうです。
それでは、他にいくつかの企業の展示内容も紹介します。
【金沢機工株式会社】ヒューマノイドのデモが注目集める
金沢機工株式会社のブースでは、人型ロボット「ヒューマノイドロボット」のデモンストレーションが注目を集め
ていました。あらかじめ人間が教え込ませたダンスや日常の動作を学習しており、デモではバランスを保ちなが
ら二足歩行し、音楽に合わせてリズミカルな全身運動を披露していました。

現状はスマートフォン内のアプリでリモート操作していますが、ゆくゆくはロボット自身の目で見て得た情報か
ら、AI が次の行動を判断して動けるようにするといいます。たとえば、工場での作業中にボルトを落とした場合、
それを拾う動作を事前にプログラムしていなくても、ロボット自らの判断で拾うようにしたいそうです。
ところで、「人型」である必要はあるのでしょうか。担当者は「現在のところ、製造の現場は人間が働くことを大
前提に設計されているから」と説明します。製造現場で足元に太い配管が通っているとします。人間なら足を上
げてまたげば問題ありませんが、キャタピラー式の搬送ロボットだと、そうはいきません。
こうした現状認識や課題を踏まえ、金沢機工では大学や他の企業とともに、ヒューマノイドが製造業で活躍す
る未来に向けた研究開発を進めています。
【株式会社ジェスクホリウチ】複数アイテムをピッキングするシステム紹介
株式会社ジェスクホリウチは指定された部品を保管用の棚からピッキングするデモンストレーションを披露し
ていました。特定の1種類の部品を見つけて運ぶだけではなく、形や大きさの異なる複数のアイテムを認識、選
別してピッキングできる点に特長があります。

ジェスクホリウチではこうした機器を単体で販売しているほか、複数アイテムのピッキングを自動化するシス
テム全体の販売にも対応しています。製造業で人手不足感が年々強まる中、限られた作業者の負担をなるべく
減らし、省人化と生産性アップを両立できる仕組みと言えそうです。
【株式会社ソディック】モータを直線配置、レスポンス良い放電加工機
加賀市に事業所を置き、設立 50 周年の節目を迎えた株式会社ソディックは、メイン事業のワイヤ放電加工機を展示しました。ソディックが世界に先駆けて採用した「リニアモータ駆動方式」は、一般的には回転することの多いモータを直線上に展開し、電気エネルギーを回転運動ではなく直線運動(推進力)に変換する技術です。シンプルな構造だからこそレスポンスが良く、モーションの遅延が少ないという特長があるといいます。また、使用する部品が少ないためにメンテナンスの手間が小さくなるメリットもあります。

【中村留精密工業株式会社】96 種類の工具で多品種小ロットに対応
複合精密 CNC 旋盤の新仕様「NT-Flex+」を初めて国内で展示したのは、中村留精密工業株式会社です。

新仕様は R 側主軸に X 軸、下の刃物台(タレット)に Y 軸を追加し、3本の工具での同時加工を実現して、より
複雑な加工パターンに対応できるようになりました。
担当者によると、96 種類の工具を搭載できるため、段取り替えの手間が大幅に削減でき、多品種小ロットで
の製造であっても効率化できるメリットがあるといいます。
中村留精密工業では工作機械を販売するだけでなく、プログラムを勉強できるソフトウェアも提供しています。
国分紀芳(くにわけきよし)
Seeds合同会社代表社員。1985年、石川県生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社へ入社。経済記者として北陸新幹線開業、ホテルやマンションの開発ラッシュ、大型商業施設の相次ぐ進出などを取材する。2022年2月に独立後は各種ライティングやPRコンサルティングなどを手掛ける。https://connect-u.biz/



