製品群を拡充、事業領域を拡大

前田工繊株式会社(福井県坂井市)は2025年4月1日、三井化学株式会社(東京)の100%子会社に当たる三井化学産資株式会社(東京)の全株式を取得して子会社化する。取得価額は56億円余り。前田工繊は自社グループの既存事業と親和性が高いとみて買収に踏み切った。

前田工繊は自社グループのビジネスを、公共事業関連資材や農業関連資材を製造販売する「ソーシャルインフラ事業」、産業用途の部材や自動車用ホイールブランド「BBS」を手掛ける「インダストリーインフラ事業」に分けている。今回の買収においては、建築・土木資材や配管資材の分野で高いシェアを持つ三井化学産資を傘下に加えることで、ソーシャルインフラ事業におけるメリットが多く見込まれる。

具体的には、土木資材分野で製品ラインアップを拡充し、事業規模を拡大できる。また、建築資材分野では新たな事業領域として配管資材が加わる。単に企業としてのボリューム感が増すのはもちろん、テリトリーを広げることにより、前田工繊が保有するさまざまな既存技術・ビジネスと組み合わせて新たな価値を生み出そうという試みとも言える。

三井化学産資の2024年3月期の売上高は90億800万円、純利益は8,800万円。株式は全てを三井化学が保有しており、三井化学は2025年4月1日に全てを55億円で前田工繊に売却する。前田工繊側の買収金額はアドバイザリー費用を含めた56億1,000万円となる。

★前田工繊株式会社 1972年設立で、東証プライム上場。資本金は64億円、従業員数はグループ連結で1,244人(2023年6月30日現在)。2024年6月期の連結売上高は545億円、純利益は68億円の計画で、いずれも過去最高業績を更新する見通し。

★三井化学産資株式会社 1964年設立。東京都文京区に本拠地を置き、合成樹脂製品や土木資材、建築資材などの製造・加工・販売を行う。資本金は4億円。



著者プロフィール

国分紀芳(くにわけきよし)

Seeds合同会社代表社員。1985年、石川県生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社へ入社。経済記者として北陸新幹線開業、ホテルやマンションの開発ラッシュ、大型商業施設の相次ぐ進出などを取材する。2022年2月に独立後は各種ライティングやPRコンサルティングなどを手掛ける。https://connect-u.biz/

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