MEX金沢2024

213社・団体が最新の工作機械や電子機器を紹介

MEX金沢2024(第60回機械工業見本市金沢)は2024年5月16~18日、金沢市の石川県産業展示館3、4号館で開かれ、213社・団体が最新の工作機械や電子機器を紹介しました。地方では人口減少に伴う労働力不足が長期的な課題で、会場では生産活動の自動化やAI(人工知能)の活用による効率化を支援するソリューションを提案する出展者が目立ちました。(国分紀芳)

目次

  • 3万6,000人超が来場/学生向けの企画も
  • 4人分の仕事を3人でこなす未来?
  • 企業ピックアップ
  • 【北菱電興株式会社】AI検査で正確性を向上
  • 【高松機械工業株式会社】新型NC旋盤を展示
  • 【株式会社ツキボシP&P】強みを掛け合わせる
  • 【中村留精密工業株式会社】金属もムダも削ってスピードアップ
  • 【株式会社ソディック】人工の雷で金属を加工
  • 【松本機械工業株式会社】最大10点でワーク測定

3万6,000人超が来場/学生向けの企画も

主催する一般社団法人石川県鉄工機電協会によると、MEX金沢はコロナ禍の影響で2020、21年が中止、22、23年は出展数を絞っていたため、今年は5年ぶりの通常開催となりました。

経済社会の正常化に合わせて企業の生産活動が復調する中、機械メーカーの出展意欲はひときわ高く、申し込みが募集枠を大幅に上回って40~50社がキャンセル待ちに。急きょ屋外展示もできるようにしたところ、20社ほどが手を挙げる熱の高まりようでした。

来場者数は3日間の合計で3万6,000人を突破。社会人はもちろん、就職を控える学生や子どもたちの姿も見られました。

会場では大学生、大学院生、高専生らを対象とした「学生特別企画」も実施されました。企画に賛同した28社の企業ブースを訪問した学生に特典が付与される仕組みで、具体的には「2社以上の訪問」で会場内での食事券(500円分)、買い物や就活に使える電子マネーカード「ふるさと石川就職学生カード(ISica)」へ500ポイントが進呈されました。4社以上を訪問した学生には、さらにMEX金沢特製QUOカード(1,000円分)が贈られました。

4人分の仕事を3人でこなす?人口減少を商機に

さて、日本政策投資銀行北陸支店が2022年に発表したレポートによると、北陸3県の労働力人口は2015年に156万人だったのが、30年後の2045年には25%少ない117万人に減少するとされています。

人口は一朝一夕に増えたり減ったりしないので、人口に関する予測の精度は高く、少々の社会構造の変化ではトレンドが大きく変わらないもの。つまり、北陸の企業はこれまで4人でやってきた作業を3人でこなせる仕組みを整えておかないと、将来的には、事業の拡大どころか従来通りの仕事量すら担えなくなってしまう可能性が高いのです。

こうした背景から、MEX金沢2024では人手不足対策のソリューションとして、生産現場の自動化や省人化、効率化を進める機器が多く展示されました。とりわけ目を引いたのはAIを活用した製品の多さ。AIが日々の膨大な作業データを分析し、結果を次の作業内容に反映させてアップデートする繰り返しの中、より正確でムダの少ないものづくりを実現する技術です。

「人口減少」「人手不足」と聞くと、ネガティブで暗いイメージがついてまわりがちです。しかし、AIを活用した自動化・効率化は、単に人間の作業を機械に代替させるだけでなく、生産現場のレベルを一層向上させるチャンスとも言えます。そして、こうした技術は今や大メーカーだけのものではありません。北陸の中小メーカーもまた、AIを活用したソリューションに商機を見出しており、MEX金沢2024では出展各社から「未来のものづくりを支える」という気概を感じました。

それでは、いくつかの企業による展示をピックアップしましょう。

企業ピックアップ

【北菱電興株式会社】AI検査で正確性を向上

MEX金沢_北菱電興

北菱電興株式会社はAIを活用し、生産現場を効率化できる各種の製品・サービスを展示しました。

スマート画像センサーは製造品を画像で認識して良品か不良品かを判定します。この検査工程ではAIに不良品の事例を学習させることで、より精緻に判定できるようになります。

ただ、画像で良品・不良品を見分ける際、判定の正確さは対象物を取り巻く照度(明るさ)に左右されます。時間帯や天候などの外部環境により誤差が出る恐れがあるため、北菱電興は対象物の明るさを一定に保てるよう、照度センサーや照明機器を含めて一体的に提案しています。

また、工場内を複数のカメラで撮影し、それらを統合的に運用する仕組みも提供しています。たとえば、360°撮影できる魚眼レンズのようなカメラで全体を把握しておき、フォーカスしたい箇所については映像の歪みを見やすい状態に補正して大きくモニターに映せます。

さらに、作業者の携帯電話やビーコンの位置情報を集約し、作業工程のうち、どこがボトルネック(業務を停滞させている箇所)になっているかを把握する仕組みもあります。人やモノを探す手間を省き、より生産ロスの少ない工場レイアウトの確立に生かすことで、現場の生産性を高めます。

【高松機械工業株式会社】新型NC旋盤を展示

MEX金沢2024_高松機械工業

高松機械工業株式会社は新型のNC旋盤「XTL-8」と「XTL-8MY」を出展。自動車部品を作る現場での採用を想定し、標準593mmの加工に対応したモデルです。

高松機械工業は複数のNC旋盤を展開してきましたが、取引先から「既存製品の中間に当たる大きさの機種がほしい」と要望があり、それに応じて製品化したもの。ファナック製の最新OSを搭載しており、会場ではデモ運転に興味深げに見入る来場者の姿がありました。

 一方、こうしたNC旋盤で加工する際に素材を運ぶ技術を応用し、ゴミ処理・リサイクル施設向けに製作しているのがビンを仕分けする機械です。株式会社PFUのスキャン技術を使い、どんどん流れてくるビンの色や形を把握。ビンを持ち上げるのに最適なポイントの座標を割り出し、複数のアームがビンをピックアップします。

 高松機械工業によると、ビンをリサイクルするには色ごとに分ける必要があるにもかかわらず、全国的にはおよそ7割で色が混ざったまま回収しています。高松機械工業の仕分け機械はAIを搭載しており、さまざまなビンの色や形を学習し続け、精度の高い仕分けにつなげます。

【株式会社ツキボシP&P】強みを掛け合わせる

MEX金沢2024_ツキボシ

株式会社ツキボシP&Pはめっき加工のスペシャリスト集団で、めっき前後の実物を展示して効果を示しました。

ツキボシP&Pによると、めっき処理で複数の金属を結びつけることにより、1つの金属では実現できない特性を持たせることができます。たとえば、鉄は強度に優れる半面、錆びやすい性質があります。一方で亜鉛は強度に劣るものの錆びにくい。そこで、鉄の表面に亜鉛めっきを施すことで、強度が高くて錆びにくい金属を形成できるのです。

ツキボシP&Pではまた、装飾性を高めるニッケルクロムめっきなどにも対応。複数の金属を掛け合わせることで、素材がもともと持っている特性に、新たな機能や価値を付与しています。

もっとも、せっかく処理した素材を運搬中に損傷しては元も子もありません。ツキボシP&Pは傷を防いだり空気に触れないようにしたりするパッキング技術にも長けており、処理から梱包までを通じて高品質なサービスを提供しています。

【中村留精密工業株式会社】金属もムダも削ってスピードアップ

MEX金沢2024_中村留精密工業

中村留精密工業株式会社は3月に発売した複合加工機を出展しました。3つのタレット(刃物台)に合わせて最大72本の工具を搭載し、加工サイクルタイムを30%カットできるモデルです。

単に加工スピードを上げるだけなら、モーターの回転スピードを上げれば事足ります。しかし、それでは加工精度が下がり、仕上がりが粗くなりかねません。

この点、中村留精密工業の複合加工機は、3タレット機構のために工具段取りを変える必要がありません。スムーズに次の加工に移れるほか、独自のアイドルタイム短縮機能も含め、加工作業以外にかかる時間を少しずつ縮減しています。金属を速く削るために、ムダな時間を削っているのです。

【株式会社ソディック】人工の雷で金属を加工

株式会社ソディックはワイヤ放電加工機を展示しました。ワイヤに電気を流して人工的に雷を発生させ、金属を加工して主に金型を製作するための機械です。

今回展示していたのはワイヤが回転する機構を持った機種で、ワーク上部から下部までムラなく加工できるメリットがあるほか、ワイヤの消費量が30%ほど削減できる利点もあります。電力消費量も抑えられ、省エネ性能の高い機種となっています。

ソディックは売上高の7割を工作機械事業が占め、ワイヤ放電加工機と同じく金属を切削する機械として、超微細加工ができるマシニングセンタも製造しています。一方、素材を積み上げて形を作る金属3Dプリンタも作っています。金属の塊を削る、逆に金属の粉から塊を作る、という両方のアプローチに対応しています。

【松本機械工業株式会社】最大10点でワーク測定

MEX金沢2024_松本機械工業

松本機械工業株式会社は円筒研削盤向けのロボットハンド定寸装置を出展しました。松本機械工業によると、一般的には対象物を1点ずつ計測するところ、同社の製品なら最大で10点を立て続けに計測できます。2.2ミクロンの誤差範囲内なら対応できます。

従来の定寸装置は高価であり、1点を計測して得た値から、他の箇所の径を推定して補正していたため、加工条件が異なると発熱の影響で推定値に合わないケースがあるそう。複数の径を直接的に計測し、補正することができれば、そうした事態を防げます。

 

 

著者プロフィール

国分紀芳(くにわけきよし)

Seeds合同会社代表社員。1985年、石川県生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社へ入社。経済記者として北陸新幹線開業、ホテルやマンションの開発ラッシュ、大型商業施設の相次ぐ進出などを取材する。2022年2月に独立後は各種ライティングやPRコンサルティングなどを手掛ける。https://connect-u.biz/

この記事をSNSでシェアする